【幽霊が怖くなくなる量子論】世にも奇妙な私たちの世界

幽霊 viewpoint-視点

幽霊、オバケ、怪奇現象などなど、平気なふりをして怖がっている人は意外と多いものです。

いくら幽霊なんて存在しないと理屈で必死に否定してみても、不気味な古いトンネルや建物、真夜中のトイレ、だれもいない部屋やオフィスに一人でいるとき、得体のしれない恐怖を感じることもあります。

ホラー映画や怪談話を楽しむ分にはよいのですが、困るのはそれにおびえてトイレに行けなかったり、仕事や勉強がはかどらなかったりして実生活に支障をきたす場合です。

しかし、この世界には幽霊よりも不思議なものがあります

それを知れば、幽霊なんかを怖がることがバカらしくなるかもしれません。

世界は何で出来ているか

幽霊は何で出来ているのか、そもそも幽霊は存在するのか、その答えは明らかにされていませんが、

この世界が何で出来ているのかは科学によってかなりのことがわかってきています

この世界のすべてを形づくるもの、それは原子や分子という目には見えない小さなものであることを私たちは知っています。

たとえば、私たちが生きるのに必要不可欠な空気中の酸素は、酸素原子(O)が二つ集まってできた酸素分子(O2)のかたまりであると学校で習います。

さらに、原子は原子核と電子によってつくられていて、原子核は陽子や中性子が集まってできており、陽子や中性子はクォークという素粒子でできている、ということも科学的に解明されています(素粒子は現在17種類発見されています)。

そして、素粒子よりも小さなものは存在しない、すなわち素粒子はそれ以上分解することができない世界の最小単位である、と考えられています。

ちなみに素粒子の一つである電子の大きさは
10-18メートル(0.000000000000000001m)以下、もしくは大きさ0ともされており、正確なことはまだわかっていません。

素粒子のような極小の世界について研究する科学に量子力学(りょうしりきがくがあります。

量子とは、一つ二つと数えることができる、それ以上分割できない小さなかたまり、という意味で、つまり素粒子とは量子のことです。

とても不思議な量子の世界

量子にはとても不思議な特徴があります。

それは、「粒子」と「波」の性質をもつ、ということです。

これは二重スリット実験という科学実験によって確認されています。
(下の動画では驚くべき二重スリット実験の結果が興味深くまとめられています。ただ、間違った表現や解釈も多いため、一種のSFとして見ることをおすすめします。ですが前半部分の一般的な粒子と波の性質の表現は正しく、いかに量子が常識はずれなものなのかの理解を助けてくれます。)

2重スリットの実験 – YouTube

【上の動画では、スリットが一つの場合は電子が粒子と同じ性質を示すとされていますが、実際はスリット一つのときに波の性質が失われている訳ではありませんし、スリットの幅が十分に狭ければスリット一つでも波の性質が確認できます。他にも間違った表現が多々ありますが、単一の粒子として量子を打ち出したのに波特有の干渉縞(かんしょうじま)があらわれる、しかし観測をすると干渉縞が消える、つまり量子には「粒子と波の二重性」があり、観測によって波の性質は消えてしまう、ということの衝撃を映像によってエキサイティングに伝えてくれてはいます。より正確な情報が知りたければ、難解ですがこの動画をトンデモ理論の疑似科学とぶった切る下の動画が参考になります。】

【真】本当の二重スリット実験 – YouTube

 

粒子と波はまったく違う性質のものです。

粒子には特定の形がありますが、波には特定の形がありませんし、力(エネルギー)の伝わり方もぜんぜん違います。

たとえば、池にむかって石(粒子)を投げると、投げた石(粒子)は水面の一点にポチャリと落ち、石(粒子)にたくわえられたエネルギーはその一点に伝わります。

石(粒子)が池の一点に伝えたエネルギーは、その後波として池全体に伝わっていきます。

波としてのエネルギーの伝わり方は石(粒子)のそれとはまったく違い、一点から円形にいくつも発生し、遠くまでかつ何度も伝わっていきます。

 

このように粒子と波はまったく別の性質のものですが、量子はこの二つの性質を同時にもつのです。

これを「粒子と波の二重性」といいます。

このことの意味を考えるとき、驚くべき、そして幽霊なんかよりも恐ろしい一つの事実が浮かび上がります。

そんなものはこの世界に存在するはずがないのです…

先ほど例に挙げたように、石を池に投げれば粒子と波の性質を別々に観察することはできます。

しかしこの二つの性質を同時にもつということは、投げられたたった一つの石が波のように空間の全方向にいくつも遠くまで、それでいて粒子のように力強く飛んでいくということを意味します。

ありえません。

さらに驚愕的なのは、「粒子と波の性質が重なった状態の量子」は直接見ることができないのはもちろんのこと、頭の中で想像することすらできないということです。

ためしにイメージしてみようとすればわかりますが、私たちには粒子が波のように動いている姿や、波が粒子として動く姿を思い描くことはできても、粒子と波の性質を「同時」にもつものの存在を思い描くことはできません。

いくら頑張ってみても、「粒子」と「波」のイメージが交互に連続してあらわれるだけです。

これは磁石の同極(N極とN極、S極とS極)をくっつけようとするようなものです。

粒子と波の性質を一つにくっつけようとしても、結局イメージが結びつくことはなく、頭の中に残るのは粒子と波の同時性からするりと抜け出したどちらか一方の性質のみです。

実際には、量子は波として振る舞う時は100%波として、粒子として振る舞う時は100%粒子として振る舞うため、波と粒子の性質を同時に示すことはありません。

それでも、量子はこの二つの性質をもつのです。

いや、どういうこと?と思わずにはいられませんが、そういうことなのです。
 

幽霊は普通の人に見ることができません(見える人には見えているそうですし、見えない人にも心霊写真で幽霊とされているものを見ることはできます)が、想像することは簡単です。

しかし、量子は直接見ることばかりか想像することすらできません。なのにその存在はすでに確認されている事実です

もう訳が分かりません。こんなものが本当に存在するのでしょうか。

量子の発見

この世に存在するはずがなく、想像することすらできない量子なんて本当にあるのか、疑問をいだかずにはいられません。

しかし残念ながら、量子の存在は先にも紹介したようにすでに「確認」された事実です。

しかもその存在は今から100年以上前から議論されています。

その初期の議論の中心にいた人物の一人として、かの有名なアルベルト・アインシュタインがいます。

アインシュタインは当時、波の性質をもつことが「確認」されていた光について、光には粒子の性質もある、とする考え(光量子仮説)を1906年に発表し、これによりノーベル賞を受賞しています(アインシュタインの代名詞である相対性理論も同じ年に発表されています)。

そして、1900年代後半になると実験技術の進歩により、量子である電子を一つずつ打ち出すことが可能になりました。

この技術を使用した二重スリット実験によって、電子(量子)には粒子と波の性質があることが確認されたのです(電子は光とは逆に、もともとは粒子であると考えられていました)。

しかし実際は、量子が粒子と波の性質をもつ、という観測結果が得られただけす。

だれかが量子の「粒子」と「波」の性質を同時にもっている状態を直接確認したわけではありません。

その状態を人が観測しようとしても、量子は粒子としての姿しか見せてくれないからです。

しかし、観測していない所では明らかに波の性質でないと説明できないことがおこります。

不思議でしょうがありませんが、人類はすでに、どんなおとぎ話やSF映画よりも奇妙なこの現実世界の仕組みに気づいてしまっているのです。

 

私たちの常識からすると理解不能な量子ではありますが、じつはその存在はだれにでも簡単に実感することができます。

ここが実感してみたくても実感できない幽霊と違っておもしろくもあり、よっぽど怖いところでもあります。

量子の存在を実感する簡単な方法

存在するはずがないのに存在が確認されてしまった量子ですが、その存在を実感する方法はいたって簡単です。

目を開いて何かを見ればよいのです。

目を開いたとき、そこに何かが見えているのなら、それは光を感じているということです。

何かが見えている、その何かの姿かたちは光によって私たちの目に運ばれてきた情報です。

暗闇でもかすかな光があればものの形がうっすら見えますが、完全な闇の中で何も見えなくなるのはそこに光がないからです。

そしてアインシュタインが見いだしたように、光は波でありながら粒子の性質をもつ量子(光子)そのものです。

つまり、私たちは幽霊よりも訳のわからない量子と日常的に接しているのです。

さらに興味深いことに、何かを見るとき私たちは量子の「粒子と波の二重性」も同時に体験しています。

なぜなら光は空間中を波(電磁波)として移動していますが、私たちの目(網膜)と反応するときの光は粒子(光子)として作用するからです。

光が波として目に作用するのであれば、暗闇の中にあるロウソクなどの光は力が弱すぎて見えるまでに時間がかかってしまうはずですが、私たちの目はそれを見た瞬間に認識します(粒子であれば光の強さに関係なく一瞬で認識できます)。

まったく不思議でしょうがありません。

それでも、量子である光(光子)を直接見ることはやっぱりできません。

光を見ているつもりでも、実際に見ているのは私たちに認識可能な光の波長(可視光線)によって「光っているもの」で光そのものではありません。

たとえば、太陽が白く光っているのを見れば光を見ているような気がしますが、それは太陽の燃えている姿が光によって目に運ばれてきた結果見える太陽の姿であって、光そのものを見ているわけではありません。

他にも、青い空や夕焼け空、色とりどりのレーザー光線が見えるのは、空気中の酸素分子やほこりなどが特定の光の波長を反射し光っている姿、目の前のスマホやパソコンのディスプレイで見ているのは、画面の中に埋め込まれた画素が光っている姿です。

私たちは目で光を「感じて」ものの形を認識していますが、光を「見て」いるわけではないのです。

そもそも光は光で照らすことができないため(光に影はできない)、光が見えないのはしかたがありません。

光そのものが見えてしまうのなら、明るい場所では空間全体が光に満たされているのでかえって何も見えなくなってしまうはずです。

さらに付け加えると、光は基本的に質量が0である波(電磁波)なので、他の量子である電子のようなわかりやすい実体がそもそも存在しません

見ることも触れることもできなくて当然なのです(だからといって実態のある電子が人間に見えるわけでもないのですが…)。

これは量子とはまた別の意味で驚愕的な事実です。

私たちの目は摩訶不思議な量子である光から情報を受け取り、私たちの脳はその情報をもとに意識の中に映像を作り出すのですから。生物もまた、量子に負けず劣らず不思議な存在といえます。

 

存在することはわかっているのに、見ることも想像することもできない、だけど簡単に実感することはできる量子、考えれば考えるほど頭がこんがらがってしまいますが、困ったことに量子の不思議さはこれだけではありません。

幽霊などどうでもよくなってしまうくらい、量子の奇妙な性質はまだまだたくさんあります。

まだまだ不思議な量子の世界

量子には「粒子と波の二重性がある」ということだけでも十分不思議なことですが、量子にはさらに訳の分からない特徴があります。

トンネル効果
 量子は絶対に越えられないはずの壁の向こう側に現れる

量子テレポーテーション、そして量子コンピューター
 量子は光の速さを超え一瞬で情報を伝える

零点エネルギー
 量子は何も無いはずの空間である真空の中にも発生する

どれも私たちの感覚からすると絶対にありえない話ですが、例の如くどれもすでに確認されている事実です。

一つ一つを詳しく話すと長くなるので、ここでは簡単に内容をご紹介したいと思います(といってもそこそこ長くなります…)。

トンネル効果

量子は絶対に越えられない壁の向こう側に現れます。

これは「トンネル効果」とよばれる現象です。

トンネル効果の一つの解釈は、量子の性質である粒子と波の二重性にあります。

一つの量子は波として空間に広がって存在しており、粒子としては波の広がりの中に「ある確率」ごとに存在しています。

つまり、量子は壁の向こう側にも「ある確率」で存在しうるのです。

はっきり言って意味不明ですが、ごく身近なところにその実例があります。

それは太陽が真っ赤に燃える現象、核融合反応です。

太陽での核融合反応は、水素原子核どうしの衝突によって引き起こされていますが、じつは太陽には核融合反応を起こすだけのエネルギーがないことがわかっています。

原子核どうしが衝突して核融合反応を起こすには、原子核と原子核の間にある見えない壁(エネルギー障壁)を突破する必要がありますが、これには莫大なエネルギーが必要で、それは熱エネルギーにすると数百億度もの高温に相当する、とされています。

しかし、太陽の温度は一番熱い中心部分でも1500万度ほどしかありません。

つまり、トンネル効果なしに太陽は核融合反応によって光輝くことができないのです。

そして太陽が光り輝いていなければ、結果として私たち人類を含む地球上の生命も存在できません。

私たちが生きているのは量子が壁をすり抜けてくれるおかげなのです。

意味不明なのに変わりはありませんが…。

量子テレポーテーション、そして量子コンピューター

量子テレポーテーション

量子は「ある情報」をどんなに遠く離れた場所へも一瞬で送ることが可能です。

なぜこのことが不思議かというと、それはこの世に空間中を光よりも速く移動するものは存在しないはずだからです。

たとえば、地球の裏側にいる人と電話(電波)で話をしても0.1秒くらいはタイムラグが生じますし、仮に地球から1億光年離れた星にいる宇宙人と電話をしたら、こちらの声が向こうに届くまで1億年以上かかってしまいます。

それなのに、量子はある情報を、たとえ宇宙の端から端ほど離れている距離、光の速さで何百億年もかかるような距離でも、タイムラグなしに一瞬で送るのです。

これはまさに瞬間移動であり、この現象は「量子テレポーテーション」とよばれています。

ここで注意点が二つあります。

一つは、量子テレポーテーションで送ることができる「ある情報」とは、

二つ以上の量子に「量子エンタングルメント(量子もつれ)」【量子の情報がからみ合った状態、単純に二つの量子がエンタングルド状態(もつれた状態)にあるとき、一方の量子情報が確定すれば、もう一方の量子情報もその瞬間確定する】

が存在しているときの量子情報であり(厳密には量子情報そのものではなく、量子情報のポテンシャル)、人間にとって都合のいい何かをテレポーテーションさせられるわけではないということです。

もう一つの注意点は、量子テレポーテーションで何かの量子情報を転送するとき、転送先には転送元の量子とエンタングルド状態にある量子をもった量子情報の受け手がいることになりますが、この受け手には転送されてきた量子情報がどんな情報なのか、その瞬間には確認することができないということです。

転送先で量子テレポーテーションされてきた量子情報を抽出するのには、送信元の測定結果の情報が必要になるのですが、その情報をやり取りするための通信手段は従来の方法しかなく、結果として人間にとっては光速度以下のレベルでしか量子情報をやり取りすることができないのです。

ですので量子情報(のポテンシャル)はテレポーテーションしていても、人間にとってはテレポーテーションなど起きていないのも同然です。

ましてやSF映画のように、量子テレポーテーションを使って人や物を瞬間移動させられるわけでありません。

それでも、人間を構成するすべての量子情報を読み取ることができれば、理論的には量子エンタングルメント(量子もつれ)を利用して人間の転送も可能といわれています。

とはいえ転送元の測定結果を転送先に知らせるための手段は従来の方法を取らざるを得ないため、光速度以上での転送≒瞬間移動(テレポーテーション)は不可能でしょう(地球の裏側に1秒で行けるなら十分すごいことではありますが!)。

量子コンピューター

量子テレポーテーションには、私たちの世界に応用可能なもう一つの大きな特徴があります。

それは現在世界的に注目をされている夢の次世代コンピューター、量子コンピューターと密接なかかわりがあるということです。

なぜなら量子テレポーテーションは、「入力に重ね合わせの状態を許す」「入力状態を一括に処理する」「処理の途中で量子エンタングルメント(量子もつれ)が形成される」、という量子コンピューターの条件を満たす最小の単位となるからです。

量子コンピューターとは、最先端のスーパーコンピューターでも解くのに何万年もかかってしまう特定の計算を、瞬時に解くことができるまさに夢のコンピューターです。

量子コンピューターでは、従来のコンピューターが扱う情報量の「ビット」に代わって、「量子ビット」を用います。

すなわち、今まで情報の基本単位として0と1の二進法を使っていたビットに対して、量子ビットは情報の基本単位である0と1を重ね合わせの状態にして扱うのです。

それによりコンピューターの計算能力は指数関数的に高まります(従来のビットではビット数に応じた情報量しか扱えませんが、量子ビットでは1つで2通り、2つで4通り、3つで8通り、4つで16通り…10個で1024通り…50個なら1125兆通り!…の状態を「同時に」扱うことができます)。

量子コンピューターの普及にはまだまだ時間がかかりそうですが、実は一部の分野では試験的な運用がすでに始まっています。

もしもいつの日か、私達にも量子コンピューターが扱える時代がくれば、だれにでもコンピューターへの入力情報として、量子の不思議な重ね合わせの状態にある量子ビットが扱えることになります。

考えただけでワクワクドキドキする話ですが、それでも量子自体が何なのか、相変わらず人間には理解できていないかもしれません…。

訳が分からなくても使えるものは使う、人類とはたくましい生き物だとつくづく思います。

零点エネルギー(ゼロ点エネルギー)

量子は真空(何もない空間)中にも発生すると考えられています。

なぜならそこには必ずエネルギーが存在しているからです。

ここでいう真空とは、分子や原子をふくめたあらゆるものが一切存在しない仮想上の空間(完全真空)であり、キッチンで使う真空パックの真空とは次元が違います。

完全真空中にはエネルギーを生み出すものが何もないため、当然エネルギーは0であり、結果として温度は絶対零度(温度の下限である摂氏-273.15度)になっています。

それなの何故かそこにはエネルギーが存在するのです。

このエネルギーは「零点エネルギー」とよばれています。

何もない空間に何かがある、相変わらず何のことやらさっぱりわかりませんが、今まで何度も見てきたように、量子に私たちの常識は通用しません。

真空中にもエネルギーが存在する理由は、量子力学の根幹をなす理論、不確定性原理によります。

不確定性原理、これまた難解な量子力学における理論によると、時間の長さの確かさが増すとエネルギーの値が不確かになり、エネルギーの値の確かさが増すと時間の長さが不確かになります。

つまり、極小に切り取られた刹那の時間(10の-20乗秒以下の時間)では、時間の長さの確かさが増し、エネルギーの値は不確かさが増すのです。

エネルギーの値が不確かということは、真空中であってもごく短い時間の瞬間瞬間になら、非常に高いエネルギーをもつ領域が存在してしまうということです(そもそもエネルギー0という状態はエネルギーの値が確定してしまった状態であり、それ自体が不確定性原理に反してしまうため許されません)。

そしてそのエネルギーから粒子と反粒子がペアになって生じ(対生成)、生じた瞬間に粒子と反粒子は衝突して消滅(対消滅)すると考えられています。

はい、まったく意味が分かりません。

それでもこの現象は実験によって確認されています(カシミール効果)。

 

以上、量子のさまざまなあり得ない性質をみてきましたが、何一つ理解できないというのが量子のすさまじいところです。

絶対に越えられないという壁を越えたり、光よりも速く動くものがないこの世界で瞬間移動をしたり、何もないと言っているのにそこにある量子、私たちはこんな存在とどう向き合えばいいのでしょうか。

結論、幽霊なんて怖くない!

私たち人間は、得体の知れないものに恐怖を感じてしまいますが、よくはわからずとも、何か納得できそうな答えがあるのなら、よくわからないままに納得することができる、という素晴らしい強みをもっていますし、見て見ぬふりでやり過ごすことにも慣れています。

それでもいつしか必ず、得体の知れないものに立ち向かい、克服しようとする、好奇心と勇敢さを兼ね備えた人たちがあらわれます。

そうして人類は文明を発展させてきたはずです。

量子に対しても、これまで人類は長い年月をかけ、世界中の英知を集めてそれが何なのか解明しようと挑戦してきました。

その戦いはまさに今この瞬間も続いています。

つまり、現在の最先端の科学をもってしても量子そのものが何なのか、よくわかっていないのです…。

量子とは何なのか、それを説明するいくつかの仮説の内、有力なものに「超ひも理論」があります。

超ひも理論によると、量子とは長さ10-34乗メートルほどの極小のひもが1秒間に1042回以上も振動している姿(1秒間に1兆回の1兆倍の1兆倍以上の振動)であるといいます。

そして、この理論が成立するのは世界が9次元空間であるときです…(私たちの住む世界は3次元空間で、残りの6次元は小さく丸まっているため認識できません…)。

理論の内容が凄まじすぎて、もはや何を言っているのかもわかりませんが、この理論ではあれば訳の分からない量子の性質について、矛盾なく説明できるといいます。
しかし、今のところこの理論が本当に正しいのかどうかを検証する手段がありません…。

なんにせよ、この世界は私たちが認識しているのとは全然違った形をしている、ということは確かなようです。

そもそも量子力学がなぜ成り立つのかが誰にもわかりません。

それは量子力学がこの世界で起こる事象を説明するためにつくられた理論にすぎないからです。

すなわち結果を説明するためにはこういう理論があればOK、としているだけで、この理論があるからこういう結果になる、となっているわけではないのです。

おもしろいことに、なぜ量子力学が成り立つかわかっていないにもかかわらず、量子力学が成り立つことは「ベルの不等式の破れ」によって既に証明されてしまっています。

もう何が何だかわかりません…。

それに加えて、量子力学に反する物理現象は今まで一つも発見されていない、という事実もあります。

この世界を記述するためにつくられたのが量子力学であるため、それはそれで当然の事ではあるのですが…。

結局この世は量子が示すような、人間には理解不可能な性質で成り立っているということを認めなければならず、つまり人類にこの世の理(ことわり)を理解することは、今のところできないということです。

量子力学の世界には「量子力学を理解したという人がいたら、その人は量子力学を理解していない」、「だれも量子力学を理解できない」という言葉があるくらいです。

ここで思い出してもらいたいのは、この世界の最小単位である素粒子は量子だという事実です。

つまり、私たちはだれにも理解することができない量子で形作られているのです。

なんだか恐ろしくありませんか?

そして幽霊が本当にいるとして、彼らもまた量子で形作られているはずです(この記事の目的が幽霊を克服することにあったことも思い出してください…)。

そもそも量子の不思議さにくらべれば、幽霊なんて取るに足らない存在にも感じますし、もし幽霊のようにちょっとだけ量子っぽい性質をもちながら、人間に認識されるほどの実態がある存在がいるのなら、それは人類にとって大変な喜びです。

すぐさま世界中の量子物理学者たちが発見と研究に心血を注ぐでしょう。

ですがそんなことは起こりません。

なぜなら幽霊なんていないのですから。

いないのならば、そんな存在を怖がる必要なんてないでしょう。

***

目には見えず、想像もできず、何なのかもわからない、しかしその存在は確認されていて、この世界を形作っている量子。

この意味不明さにくらべれば、幽霊なんてどうでもいい存在に思えてこないでしょうか。

幽霊が怖くなくなれば、夜の暗闇におびえて不安とともに朝を待つ必要はなくなり、より快適な人生を送れるはずです。

だからといって幽霊の話が生まれるきっかけになったであろう、闇に潜むものに対しては無警戒にならないほうがよいでしょう。

すなわち犯罪者に遭遇するリスクや夜更かしによる健康へのリスク増大に対してです。

量子はとても不思議な存在ですし、幽霊も本当にいるのであれば怖い存在ですが、人間もそれに負けず劣らず不思議で怖くて意味不明な生き物だという事実もまた、おもしろい話です。

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Newtonライト2.0 超ひも理論
量子力学のからくり 「幽霊波」の正体 (ブルーバックス)
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